忘れられない写真館での思い出
神妙な表情をしている、最初の写真
まだ私が幼稚園に入る前のことです。
気が向いたのか、両親が私を写真館に連れて行ってくれました。
どういう経緯だったのか、私は聞かされていません。
妹が生まれる前だったようで、写真には妹がいません。
当時お気に入りだった、赤いワンピースを着た私の写真が数ポーズ残っています。
しかしその表情は、かなり硬くて神妙です。
笑顔の写真は、たった1枚だけ。
おそらく初めての場所に緊張してしまったに違いありません。
せっかく写真を撮ろうとしたのに笑顔でなかったのは、両親にしたら残念だったことでしょう。
その写真は普通サイズだけでなく、大判の写真も残っています。
また写真館では、その写真をキーホルダーにしてくれたのです。
金色のキーホルダーは、金具はすっかり錆びてしまいました。
しかし、今でもキーホルダーは大事にしています。
その日のことは、椅子に座らされて写真を撮られたような記憶があるだけです。
それでも写真を見るたびに、なんだかうれしい気持ちになります。
両親と一緒に出掛けた、という大切な記憶だからなのでしょう。
子供時代の、とても大切な思い出のひとつです。
今も忘れられない成人式の写真
私が2度目に写真館を利用したのは、成人式の前撮りをしたときでした。
「成人式の当日は忙しいだろうから」と前撮りをすることになったのです。
そのとき利用した写真館は、通っていた美容室の紹介です。
この写真が私にとっては今でもトラウマです。
思い出すのも少し嫌なくらい、「見たくない写真ナンバーワン」なのです。
なぜなら、美容室でのメイクが、思ったよりも気に食わなかったのです。
黄色いアイシャドウのせいか、腫れぼったい目になっています。
それを顔なじみの美容師さんには言いづらく、そのまま我慢してしまったのです。
さらに当時は今までの人生で一番太っていた時期なのです。
体重はたいしたことがないのですが、やはり痩せている時期と比べると大違いです
特に顔の太り具合が今でも残念でなりません。
そのため、出来上がった写真の仕上がりが良いわけがありません。
これは写真館には落ち度はなく、私が悪いのだと思っています。
似合わない化粧をした写真が未だに嫌で仕方ありません。
しかし成人式の写真ですし、撮り直すわけにもいきませんよね。
なんと写真館はサービスで、カレンダーまで作ってくれました。
喜んだ両親はそのカレンダーを居間に飾ってしまったのです。
しかし視界に入れたくなかった私は、ある日こっそり捨てました。
すると両親から想像も出来ないほどに怒られてしまいました。
転居もあり、現在の居間にはカレンダーも写真も飾られていません。
もちろん飾られたら撤去することでしょう。
その写真を、母は今でも自分の部屋で大切に保管しているようです。
私としては見たくない写真でも、両親にとっては大切な成長の記録なのでしょう。
予想外の展開となった結婚式の前撮り
結婚式の前撮りも写真館で行いました。
しかし、これが予想外の展開となりました。
写真館との約束は12時でした。
しかし母親に、朝4時に起こされてしまったのです。
起こされてすぐに「約束は昼だから」と母親には伝えました。
ところが完全に時間を勘違いしている母親が話を聞き入れてくれませんでした。
既に父親は他界していたので母親は結婚式に対して「私が頑張らないと」と異様に張り切っていたのです。
やむなく、そのまま起きて身支度を整えました。
後から確認したところ、母親は「朝の7時から」だと思っていたとのこと。
誰もそんな話はしていないので完全な勘違いです。
そこまでは良かったのですが、早起きしすぎた私は、前撮りの最中に眠くなってしまったのです。
カメラマンに何度も起こされることになってしまいました。
特に、白無垢や色打掛を着ていたときが眠気のピークだったのが忘れられません。
しっかり着込むため、暖かかったのですね。
おかげで半分眠っているような顔に仕上がってしまいました。
和装とドレス姿とでは、明らかに表情が違います。
もちろん、月日が過ぎたいまとなっては家族全員にとって、ただの笑い話です。
滅多に見ることはありませんが、見るたびに思い出して笑ってしまいます。
このとき撮った写真が、自分が撮ってもらった写真の中で、一番好きです。
若く、お気に入りの衣装を着て、楽しそうな自分を見るたび、懐かしい気持ちになります。
突然の写真撮影
さらにそこから数年後、また写真館を利用する機会がありました。
1歳下のイトコが結婚することになり、前撮りが決まりました。
すると、イトコの両親から「せっかくだから家族写真を撮らないか」と提案されたのです。
家族というと、母・夫・妹・私、の4人です。
「家族で写真を撮る機会がないから、いいかもね」ということになりました。
そこで、イトコの前撮りと同じ日に、家族写真を撮影してもらったのです。
夫以外は全員和装です。
着物を着ることも、家族で写真を撮ることも滅多にないので、楽しかったのが忘れられません。
これといった理由もない記念撮影だったので、緊張することもありません。
家族全員が、終始和やかなムードでした。
もう10年以上になりますが、これもまた忘れられない大事な思い出です。
私の後悔
30代もなかばを過ぎてから、妹が結婚しました。
お相手は40代後半で、過去に結婚歴があるかたです。
もう高校生でしたが、子供も1人います。
そのせいか2人の結婚では、「結婚式」「披露宴」という話題は、どこからも出ませんでした。
私にしてみれば、可愛い妹です。
そこで「せめてドレス姿の写真だけでも」と写真館などでの撮影を提案したのです。
ところが、妹も、妹の夫も、全く乗り気になってくれませんでした。
写真の1枚だけでも残してあげたかった、という気持ちが、何年たっても消えません。
私が結婚した時は、結婚式も披露宴も行いました。
数えきれないほどの写真が残っています。
どれも大事な写真です。
そういう写真が妹に1枚もないのだと考えると、申しわけないような気持ちになるのです。
もしかしたら妹は全く気にしていないかもしれません。
それでも、無理矢理にでも手配すればよかったのかと思うことすらあります。
きっと、この気持ちはずっと消えないような気がします。
何よりも、私が、妹のドレス姿を見たかったのです。
とても残念に思っています。
【終わりに】
街の中には、あちこちに、たくさんの写真館があります。
しかし、実際に入ったことがあるのは数店舗だけです。
普段はなかなか、入ることがありません。
それでも行った時の思い出は、どれも私には大切なものです。
成人式の写真だけは未だに見返したくはありませんが…それもまた、思い出のひとつと言えるでしょう。
家族の大切な歴史の1つです。
いろんな家族が、いろんな思いで写真館を利用しているのでしょう。
もう私も40を過ぎて、なかなか写真を撮りに行くような機会もなくなりました。
しかし、またいつか家族写真を撮る機会を作りたいなとは考えています。